PentaxのQマウント用魚眼レンズ03 FISH-EYE
は、Q-S1に取り付けて使うと、イメージサークルがセンサーサイズをカバーできず、切り抜きになる、という話は公式のカタログに書いてあった。
だが、実際に使ってみると、出力されるJPEGは4000×3000で、12MPのものであった。
更にRAWファイル(DNG形式)も、純正のDigital Camera Utility 5を含めいくつかのソフトウェアで開いてみたが、いずれも4000×3000で、切り抜かれている様子が確認できない。
このレンズ、実際のところ画質がすばらしい、というわけでは無いのだが、何といっても面白い写真になるところが利点だ。 それでも、もしこれが勝手に切り抜かれ、4000×3000になるようにスケーラーで拡大しているのだとしたら、必要以上に画質を失っていることになるのではないか、というわけで、この切り抜き・拡大を回避する方法を見つけた。
原因はすぐに見つかった。 CPANにあるPhil Harvey氏作のImage-ExifTool [metacpan.org]を使うと、DNGも含め各種ファイルのEXIF情報を閲覧できる。 ここで、03 FISH-EYEを使って撮影した写真のRAWファイルの情報を見ると:
% exiftool -s IMGP0944.DNG … DefaultScale : 1.102218628 1.102127075 DefaultCropOrigin : 185 139 DefaultCropSize : 3629 2722 …
となっていて、要するに、起点(185,139)から3629×2722で切り出して、それぞれ1.1倍して4000×3000の画像を作っていたのだ。 実は私はスケーラーで拡大した画像が嫌いなのだ…
回避策もexiftool
に頼ることにした。
最初はこれらのタグを削除してみたのだが、それだとDigital Camera Utility 5ではLaboratory画面で画像が表示されなかった。
というわけで、以下のように、他のレンズのパラメータと同じくしてやると思った通りの効果が得られた:
% exiftool -DefaultScale="1 1" -DefaultCropOrigin="0 0" -DefaultCropSize="4000 3000" -overwrite_original IMGP0944.DNG
カメラから出てきたJPEGと、上記方法で処理したRAWをDigital Camera Utility 5で現像した写真を比較する。 当然ながら、センサーサイズをカバーできていないのが見えるようになる。 しかし、本来切り取られている部分にかなり情報が載っていることが分かる。 魚眼なので、周辺部はかなり圧縮されているのだ。
四隅がかけるが、こちらの方が味があってよい気がする。
写真左側の自転車に乗ったおっさんが、カメラから出てくるJPEGでは完全に切り取られている。
クロップなしにすると、実は左手につけていた腕時計が写り込んでいたことがわかる。
仮説通り、Q-S1 (多分Q7も)に03 FISH-EYEを装着すると、切り抜かれた上、非整数倍の拡大処理が入り、必要以上に画質が落とされていた。 RAWファイルのEXIF情報を書き換えてから現像することで、この現象は回避できた。 もちろんレンズ自体の解像力が上がるわけではないが、スケーラー特有の出力を回避できるのは、特に使用者の好みに応じた出力が求められる趣味性の高いカメラの場合には重要である。 また、切り抜き処理を行わないことで、情報量の多い周辺部をより多く残せる利点もあった。
毎回RAW現像するのも面倒なので、ファームウェアアップデートでこの切り抜き処理を無効化するオプションとかって付けてもらえないだろうか。
25-Apr-2015 初版. 01-May-2015 改訂.