Game Developers Conference 2019 (GDC 2019) は、ゲームの開発者向けのイベント。 2019-03-18から2019-03-22まで、San Francisco にある Moscone Center という大きな展示会場で行われた。 この会場はJavaOne (現・Oracle OpenWorld)の会場として記憶している人も多いのではないだろうか。
GDC は、開発事例や自社商品について登壇して講演するセッションと、たくさんの企業が自社製品を紹介する展覧会のブースがある。 他にも、インディーゲームを紹介してプレイできる場所もあるが、イベント自体が開発者向けという位置づけであるため、新タイトルの発表や既存タイトルのプロモーションはあまり行われない一方、ツールやミドルウェア、開発向けのサービスが多い。
GDC 2019の目玉はGoogle がStadia というゲームのストリーミングプラットフォームを発表した点で、このレポートでもStadia 関連の展示や発表について重点的に記述する。
会場は2つに分かれていて、一つは主にセッションが開催されるMoscone West と、もう一つは主に展示会をやっているMoscone South である。
Google は、GDC 2019 で一般にStadia の名称を初公開するということで、かなり気合の入った展示を行っていた。
Stadia はゲームストリーミングプラットフォームで、これに先立ってグーグルが「Project Stream」としてAssassin's Creed Odyssey をベータとしてプレイ可能にしていたことで存在自体は広く知られていた。
初日はまだStadia という名前が未公開ということもあり、Moscone West のホールのところに展示がありロゴも見える部分にあるものの、詳細については表示されていない状態だった。
Moscone West の向かい側、Target というスーパーマーケットの横にもGoogle のブースが展開されていた。
このブースでは歴史的なゲーム関連の展示が行われていて、最後にひとつだけ空の箱が置いてあるという演出だった。
Moscone West での展示と同様、この時点でStadia の名称は公開されていなかった。
したがって、ロゴが見える状態になっていたものの、私としてはこの後でこの上に製品名称を貼り付けるのかな?といった誤解をしていた。
この屋外ブースでのStadia 部分以外の展示内容は以下:
発表はMoscone South の講堂で行われた。
人気のセッションで、かなりの行列となっていた。
セッションが始まる前は、既存の人気ゲームを連想させるような思わせぶりな映像がずっと流れていた。
Stadia の名称が発表されると、周囲の飾りを照らす光の色が、白からStadiaテーマカラーの赤橙色に変わったのが面白かった。
発表が終わると、デモで実際プラットフォームに触ってみることができるようになっていた。
プレイアブルなゲームはAssassin's Creed Odyssey だけで、ほかは技術デモや登場予定の機能の紹介のビデオ、Unreal Engine 4 の動作デモなどであった。
これにあわせ、屋外展示もStadia コントローラが追加されていた。
会場で配っていたStadiaサングラス。
Stadiaのテーマカラーの橙色になっている。
おまけ:GDCよりずっと後に、いろいろ完了したころにいただいたStadiaバックパック。
展示会はMoscone South の地下にある巨大なホールで行われていた。
あまりにも巨大で、迷い込んだ鳩がホールの中を飛んでいた。
Amazon Web ServicesとMicrosoft といったクラウド業者が大きなブースを構えて、それぞれ幅広いサービスの紹介を担当者が行っていた。
Amazon では各種バックエンド構築に使えるサービスに加え、Deep Racer の展示が特に面白かった。
Google はGoogle Cloud Platform とStadia の両方をブースに載せていた。
ブースの中でも特に目を引いたのがEpic Games で、開発者向けのGDC にもかかわらずFortnite を全面に押し出している展示を行っていた。
特に私が気に入ったのはLoot Llama のロデオマシーンで、よくできていた。
もちろん、開発者向けということで、Unreal Engine 4 のブースもあり、このブースは二階建てになっていた。
他にも、ゲーム向けのブロックチェーンを手がけるENJIN のブースは、今後流行る可能性のある新しい技術ということで注目を受けていた。
展示会場にはレトロゲームコーナーもあり、Commodore 64 やTV FUN シリーズなど古い家庭用から、TETRIS, Donkey Kong, Space Invaders などの古いアーケード筐体、 NINTENDO 64 などの比較的新しいシステムまで、動作する状態で展示されていた。
GDC には就学や就職に強く関連するブースもいくつかあり、グラフィックス界では有名なユタ大学のブースや、人を採りたそうな雰囲気を出しているUbi のブースが代表例だ。
NVIDIA のRaytracing 関連のセッションが人気を博していたほか、Google Stadia 関連のセッションは長蛇の列となっていた。
恒例になりつつあるAmazon Web Services のセッションもそこそこ人が入っていた。
EA のGarrett Fredley 氏のGame Preservation Best Practices
では、リメイクを将来作れるように、どのようにビルド環境や開発環境を持っておくかという問題に関する社内の取り組みを紹介していた。
ビルド時にインターネットのリソースに依存する場合が多いため注意が必要で、また、社内の文化も替えていく必要がありますよね、という内容。
Riot Games のNathan Blau 氏のData Informed Decisions with the Champions of League of Legends
は、データを用いてどのようにキャラ調整を行ってきたかの事例紹介。
データを実際のゲームの改善にうまく活きるように活用していて参考になる。
Ubisoft Montreal のJennifer Henry 氏のBack to the Future! Working with deterministic simulation in 'For Honor'
では、ロールバックを行うタイプのゲームにおいて、ゲーム内のシミュレーションを決定的に行うようにするための工夫が紹介された。
デバッグ中にDesynch が起きた時にどのように検出して修正していくかについて、どのように実践したかの話が興味深かった。
セッション会場の外にはインディーゲームがプレイできるソファーが設置されており、その中でもSloppy Forgeries は有名な絵を制限時間内に真似て描く対戦ゲームで、かなり良いアイデアと感じた。